路傍の意地

70歳目前オヤジの、叫びとささやき

不肖・宮嶋の「自衛隊レディース」

 不肖・宮嶋こと、カメラマンの宮嶋茂樹氏が、ご自身の新著を手渡しに来てくれる。
 新著は写真集で「自衛隊レディース」(イカロス出版)という。

http://secure.ikaros.jp/sales/mook-detail2.asp?CD=D-102
   その謳い文句は以下の如し。

<『カメラマン不肖・宮嶋、満を持して堂々世に送る』。 思い起こせば13年前、女性自衛官がまだ「婦人自衛官」と呼ばれていた頃、不肖・宮嶋、北から南まで飛び回り、全国の大和撫子自衛官を撮りまくった、あの伝説の傑作写真集が、21世紀を迎えた今まさに、満を持して、復活を遂げた! しかも今回はただの自衛官やない、すべて「空飛ぶ大和撫子」たちである。 ある者はP-3C哨戒機の左席に座り、ある者はC-1の機長を務め、またある者はキビシイキビシイ教官として男子学生をビシバシ鍛える。命がけの救難救助ミッションに敢然と立ち向かうヘリ・パイロットの凛々しい横顔、かと思えばスッチーに見まごう政府専用機の麗しい乗務員たち。さぁさぁ、そこらのギャルにうつつを抜かしている場合ではない。有事となれば一瞬の迷いもなく国防のため飛び立つうら若き乙女から、真実の戦いとはなにかを学ぶ時がきた。 今こそ、不肖・宮嶋のレンズの前に立つ憂国の美女たちの声を聞け。 さぁ、覚悟はできたか!? > 


   いいねえ、相変わらずの宮嶋節。衰えを知らぬ愛国エンタメ感が何よりも素晴らしい。写真集をぱらぱら見ていて、あることに気がついた。
「あれえ、今回は水着写真がないの?」
  宮嶋氏、口をとんがらかして、
「何をいうてまんねん。もう、そんな時代とちゃいまっせ。そんなセクハラ写真、撮れますかいな」
  今回の写真集は、自衛隊からのお声がかりによって成立したという。不肖・宮嶋の、これまでの信じられぬほどの活躍(戦地取材はもう、ここに書ききれぬほどなので、興味のあるかたは、宮嶋氏の著書をお買い求めください)を、自衛隊は正しく評価しているのであろう。あるいは、その真実の姿をまだ、よく認識していないのかもしれない。いやいや、そんなことは、あるまい・・・・・。
「あれえ、女性自衛官も男性自衛官も、おんなじ制服なの? ほら、股間のこの変なところにジッパーの引っ張るところがプラリンと・・・」
「また、しょうもないことによう、気がつきまんなあ。あんた、どこ見とんですか。一緒。男も女も制服は一緒ですわ」
「えええ? だってトイレのときに困るでしょ。男性は簡便だけど、女性はこんな格好だと、感単に用も足せないのでは?」
「緊急時の小用のときは、男性用にはポコッとつけるマスクみたいな簡易トイレみたいなもんがあるんですけど、女性用はないっ」
「ない!? どうすんの、女の子は」
「垂れ流し。そのまま、じょじょーと」
「そのまま、じょじょー!」
「そうです。ディズニーランドに遊びに行っとるんと違うんでっせ。戦場にいて、生きるか死ぬかの戦いをしているんでっせ。もう、羞恥心もへちまもありまっかいな。当然、じょじょーです」
「ああ、そんなもんですか。じょじょーですか」
アメリカでもフランスでもじょじょーです」
  この手の知識については、宮嶋氏、恐るべき該博で、一緒に戦争映画など観にいったら、出てくる武器や戦車、戦闘機、制服について、ひとくさり能書きを聞かせてくれるので、退屈しない。
   その氏が、「じょじょー」だというのだから、きっと、「じょじょー」なのであろう。


   宮嶋氏、続けて、「低酸素状態の体験」について、面白い話を披瀝してくれた。自衛隊の戦闘機に同乗するには、それに耐えうる能力があるかどうか、その適正を事前にテストするのだそうだ。
    ご存知のように、ヒマラヤ山頂ははなはだしく低酸素で、酸素ボンベなしでは運動能力も知能も急激に低下する。戦闘機が飛行するのは、それよりもさらに高高度である。
「個室に入れられて、気圧をどんどん下げる実験をするんですわ。まあ、すこしづつでっさかい、だんだんに慣れてきます。で、紙と鉛筆を手渡されて、そこに、1000からひとつづつ少ない数字を書け、と言うんですわ。
  1000、999、998 と書くわけです。何をしょうもないことさせるんや、なめとんかい、こんなん、簡単やないか、とすらすら書く」
  で、実験室から外に出てから、自分が書いたその紙を手渡される。
  宮嶋氏、それを見て、びーーっくり!!!
「1000、999、998までですわ、おうとるんわ。後はもう無茶苦茶。998からいきなり940に飛んでたり、でたらめなことが書かれてまんねん」

  もうひとつの、面白い体験もご披露。
「もうひとつ、狭い部屋に何人も押し込まれて、徐々に空気を抜かれて、低気圧に対する耐性をテストされるんですわ。もちろん、酸素マスクをつけてまっせ。せやなかったら、死んでしまいますがな」
  誰でも経験があるに違いない。高速エレベーターで上階に昇ると、鼓膜が裏返ったようになるのを。体内の気圧が、対外の気圧よりも高くなり、鼓膜が内側から押されてペコポンとなったような感じがするのを。同じような感覚は飛行機に乗ったときにも味わうことがある。
  これが急速に起きると大変なことが起きる。体内の圧力が体外のそれに比して急激に高まり、内側から爆発してしまうのである。
  深海に棲む魚を一気に釣り上げると、手元に来たときには、口から内臓をはみ出させて悶死しているが、それも同じ理屈である。
「すこしづつすこしづつ気圧が下がっていくんですよ。そうするとですね、腸の中の気圧が高まって、自然にスーっと抜けていくんですわ。何が、って、ガスですよ。おなら」
「実弾は出ちゃわないの」
「また、汚いことを。そんなもん、出まっかいな。きゅっと締めてますがな。きゅっと。にもかかわらず、その辺の小さな隙間からすこしづづ、ガスが出て行くわけです。で、テストが終わって、試験官が、はい、では皆さん、酸素マスクをはずしてください、というんです。命令に従って、素直にマスクをはずしたら・・・・・・・、くっさーーーーーー! ものすごい臭いんですわ、おならが充満。12畳くらいの部屋に十数人がひしめき合って、全員が腸からガスを全部出してるから、もう、臭いのなんの、もの凄いにおいでっせ」
  尾籠な話で申し訳ない。しかし、私はこの手の話がなぜか、大好きなのである。宮嶋氏と話をすると、往々にしてこんな話になってしまう。(2008年2月記)