路傍の意地

70歳目前オヤジの、叫びとささやき

2020-01-01から1年間の記事一覧

桜木花道に、なぜ涙してしまうのか

本当に、不明なことだったと今になって恥じ入る。 長い間、漫画を見くびっていた。漫画が嫌いだったわけではない。少年マガジンも少年サンデーも創刊号から読み続けていた。二宮光と同じようにボールを握り、ちかいの魔球を投げようと日夜努力していたことも…

五木ひろしの「近道なんか、なかったぜ。」

2008年3月記。 ***************************************** ちょっと前の話だが、サントリーのウイスキーの広告で、顔に深い皺が刻まれた老いた男の顔のドアップの写真を使ったものがあった。写真はモノクロ。男は、多分、西部劇によく出演する、とても有名…

カラスの話

去年の春のことなんですけどね、甲州街道を愛車で快適に走っていたんですよ。春の陽光の下、ああ、いい天気だなあなんてのんきな気分でね。 ちょうど、烏山のあたりだったと思うんだけど、信号でブレーキを踏むと、いきなり空から真っ黒なものが舞い降りてき…

コーエン兄弟の「ノーカントリー」を観る

火傷をすると、その部分が、水ぶくれと呼ばれる症状を呈する。皮膚の薄皮が浮いて、その中に水状の体液がみっちりたまったようになり、「それ、つぶさないようにね。自然に治るのを待たなくちゃだめよ」と親に言われたものだったが、必ず、何かの拍子につぶ…

嘔吐論

今回は、ちょっと毛色の変わったことを書きます。 嘔吐論。といっても、サルトルの「嘔吐」について論じるなんて大それたものではありません。もちろん、月賦で車を買ったときに、何年も先までこつこつとお金を支払わねばならない、オートローンの話でもあり…

あくびをするときは手で口をかくせ

2008年2月にこんなことを書いていた。 ********************************************************* 前項で引用した内田樹氏の著書「ひとりでは生きられないのも芸のうち」(文藝春秋)の中に、とても興味深いことが書いてあった。その一文のタイトルは「子…

大佛次郎「終戦日記」を読む。

2008年2月にこんなことを書いていた。 **************************************************************************************** ブログを始めたからなのか、人の日記ににわかに興味がわいてきた、という話は以前に書いた。佐野眞一氏の「枢密院議長の日…

橋本治の恵み

橋本治氏について、さほど多くのことを知っているわけではない。 一番古い記憶は、今から40年ほど前。 古いなあ、話が。我ながら驚いてしまうが、いまだに鮮明に覚えているのだからしかたがない。何気なくテレビを見ていたら、デニムのつなぎを着た長髪の…

アラン・ロブ=グリエが死んだ

2008年2月にこんなことを書いていた。 *************************************************************************************** アラン・ロブ=グリエが死んだ。 新聞の死亡欄に、ひげもじゃの老いた顔が載っているのを見つけて、ああ、死んじゃったのか…

ケアリイ・レイシェルで泣く

ブログ初心者なので、今日まで一生懸命、よしなしことをガリガリ書き込んできたけれど、あんまり全力投球すると、身がもたない、というか、本業に差し支えるということが、うっすらと分かってきた。 確定申告もしなくちゃいけないし・・・・。 たまには、軽―…

井上ひさし著「社会とことば  発掘エッセイ・セレクション」を読む

不思議でしょうがないのである。 コロナ禍に際して、政府や自治体は日本国民に対して警戒メッセージをいろいろと発し続けているが、なぜ、日本語で伝えようとしないのだろうか? 「ステイホーム」「東京アラート」「高リスク施設」「クラスター」「オーバー…

権代美重子著「日本のお弁当文化 知恵と美意識の小宇宙 」を読む

普通の人の数倍はお弁当を食べて生きてきた、といっても言い過ぎではない。八十~九十年代、「週刊文春」編集部に延べ十二年間在籍していたが、その間、ずっと土日は出勤日だった。土曜日はまだいくつかの店が出前をしていたが、日曜日となると出前に応じて…

「MMTによる令和「新」経済論 」 藤井 聡 著 を読む

MMT(モダンマネタリーセオリー 現代貨幣理論)なるものをご存じだろうか? すでに二十世紀後半には体系化された正統的経済理論のひとつだが、その特異な理論で最近、注目を集めている。安倍政権で内閣官房参与を務めたこともある著者はこの理論に依拠し…

「MMTによる令和「新」経済論 」 藤井 聡 著 を読む

MMT(モダンマネタリーセオリー 現代貨幣理論)なるものをご存じだろうか? すでに二十世紀後半には体系化された正統的経済理論のひとつだが、その特異な理論で最近、注目を集めている。安倍政権で内閣官房参与を務めたこともある著者はこの理論に依拠し…

奈良文化財研究所編『木簡 古代からの便り』を読む

奈良時代、平城京の役所でよく使われていた木簡。日本史の教科書で見たことがあるかもしれない。墨で文字を書きつけた細長いかまぼこ板状のものである。この木簡、古代律令国家の事務運営のためにはなくてはならないものだったが、平城京を中心に、これまで…

大竹昭子著『東京凸凹散歩』を読む

永井荷風は嘉永版の江戸切絵図を携えて大正の東京を散策、消えゆく江戸の風情を哀惜し、その変貌を呪いながら随筆『日和下駄』を書いた。 昭和二十五年東京生まれ東京育ちの著者、大竹さんも荷風にならい、国土地理院の一万分の一地形図を手に、東京を縦横に…

わが心の映画音楽

1本目 まず思い出すのは、斎藤康一監督の名作「約束」。1972年3月公開。公開時私は19歳で、新宿の映画館で観て感動。岸恵子の大人の女の色気にすっかりやらた。4、5回観たような気がする。当時、サウンドトラックはレコードなどに商品化されておらず、仕方…

沢木耕太郎「流星ひとつ」を読む

コロナ禍で自宅逼塞中に、なんの気なしにyoutubeで藤圭子の歌を聞いてしまった。デビュー当時の、素朴で図太い存在感と声に圧倒されてしまい、次から次へと映像を観ることとなった。 それを一通り終えると、手には入れていたけれどまだ読んでいなかった、沢…

立花 隆著「知の旅は終わらない 」を読む

昔から、「萬巻の書を読む」という言葉があるけれど、これはまあ多読の比喩のようなもの。しかし立花さんの場合は比喩でもなんでもない。何しろ、本の副題が、「僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと」である。尋常な量ではない。実際、この新書には…

どうすんだ、30兆円の株

どなたか、もしご存知ならばお教えいただきたく、以下長々と書き連ねます。お許しください。経済のことはまことによく分からないもので。 2013年日銀の黒田総裁は「異次元緩和政策」なる仰々しい政策を始めました。その目的は、いつまでも続くデフレから脱却…

佐野眞一氏、大いにぼやく

このブログをスタートするにあたって、他人の日記というものに興味が起きた。 永井荷風の「断腸亭日乗」やら山田風太郎の「戦中派不戦日記」など、参考にすべき名作日記はいろいろとある。そんなことを思っていた時に本屋で偶然、佐野眞一氏の「枢密院議長の…

大久保千広さんの写真集で思い出す 「週刊文春」での熱い日々

奈良県桜井市に住むフリーカメラマンの大久保千広さんは、昭和23年、三重県生まれ。27歳の頃に報道カメラマンの仕事をスタートし、数年前に現役を引退した。 現役時代に撮影した何枚かの写真を、たまたま知人の新聞記者に見せたところ、「こんな貴重な写真を…